軽やかなニヒリズム
ここに一冊の愛読書がある。いつも座右において読んでいるわけではないが、なぜか精神的な疲れを感じたときに開く本である。矢部正秋 著「よい人生を生きる智慧」 産業能率大学出版部 発行
矢部氏は若いころ東西の古典を読みあさった。東洋のそれはあまりに情緒的であり人生に立ち向かう糧にはなり得ない。その点、西洋の人生論は一種の技術志向であり日常の生活体験を集積し、分析し、抽象化するのに優れていると思った。西欧の古典を読んでいる内に一つの確信に達した。それは「軽やかなニヒリズム」という生き方である。
そういえば漱石は草枕の冒頭で「知に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかく人の世は住みにくい」と書いているが似たようなことを思ったのだろう。
ニヒリズムは虚無主義であるから意味がないのではなく、考えて考えて、考え抜いた末に一つの結論に至る。要するに絶対的な真理はないのではないか、そうであるならその真理を自分の意志で作り上げてゆこうと考え始める。これは別に私の発明でもなんでもない。ニーチェをはじめ多くの哲学者、文学者が言っていることだ。残念ながらわたしはそこまで究極的な結論を出すほどの力も勇気もない。ただ何となく理解できる。そういう心情が私なりに解釈する「軽やかなニヒリズム」である。
そして矢部氏はいう
どんなに苦しくても人間の苦しみは人間の知恵で解決する以外に方法はない。・・ネガティブな人生観は人を救うことができない。かといって単なる楽天的人生観も過酷な人生の実相に太刀打ちできない。だから、われわれは人生を光と影の両面を見すえたうえで、肯定的な人生観を求めなければならない。
なお上記の本「よい人生を生きる智慧」をアマゾンで検索したが注文不可(絶版か)になっていた。
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