李登輝氏の「武士道」解題を読む
李登輝氏の「武士道」解題を読む
--ノーブレス・オブリージュとは--
前回に続いて台湾に関連した話しになるが今回は台湾の前総統である李登輝氏が自分の半生と武士道について書いた「武士道」解題という本の紹介である。
この本は大きく分けると2部からなっている。前半は李登輝氏が青年時代に読んだ本や考えたことなど、後半はタイトルの通り新渡戸稲造の「武士道」についての解説である。
(李登輝氏のこと)
まずなぜ台湾の総統であった李登輝氏が日本の教育や文化について書いているのかという素朴な疑問である。これは李登輝氏の経歴から知る必要がある。李登輝氏は1923年(大正12年)に台北市の近郊の村で生まれ、台北高等学校から京都帝国大学農学部に進んでいる。終戦とともに中退して台湾に帰り台湾大学を卒業、台湾の農林省に入省している。
現代の感覚では将来政治家や官僚を目指すならば法学か何かになるのだろうが、当時の青年たちはみな「人生いかに生きるべきか」ということを真剣に考えていたのである。その中でイギリスの評論家、歴史家であるカーライルの著作に出会い心酔する。またかつて台湾で農業指導を行っていた新渡戸稲造のカーライルについて書いた本に出会い、新渡戸と同じ農学に進むことを決意する。
長くなったがつまり李登輝氏は最初から政治家を目指していたわけではなく、時代の要請で台湾市長から総統までなったものの、この本を読めば分かるが李登輝氏は政治家というより学者肌の人である。
李登輝氏は言う。
「私自身が日本の教育の中で豊富な知育と徳育を授けられ、それを通して知識や知恵に目覚め、『人間いかに生きくべきか』という根本的な哲学や理念を身に付けたからこそ、なおのこと、この人類史的危局の中において必要とされる『日本の心』の大切さを思い起こさずにはいられないのです。」
氏は青春時代にもっとも影響を受けた本としてゲーテの「ファウスト」、倉田百三の「出家とその弟子」、カーライルの「衣装哲学」をあげ、それらの先に新渡戸稲造の「武士道」があるという。
私自身の経験など李登輝氏と比較にならないが若いころ「人生いかに生くべきか」少しは考えてきた。そして古今の哲学書、文学書などを読みあさった時代がある。後年わたしはこう結論づけた。哲学的なことを考えることはある程度、意味があるかもしれないが、必要以上に考えることは無意味ではないかと。厳密に言えば、他にやるべきことがたくさんあるのではないかと。
この本だけではないが李登輝氏の本を読んで若いころ読んだり、考えてきたことはけしてムダではなかったのではないかと思うようになった。いやそれどころかまだまだ足りないところがあったのではないかと、そのように考え直した。そして今さらながらの感はあるものの、まだ読んでいない古典を読んだり、かつて読んだが何のことかさっぱり分からなかった本を読み返しているところである。
政治家としての李登輝氏の思想、信条的に私は必ずしも全面的に賛同するわけではないがひとりの人間として氏を見たときやはり尊敬できる人間のひとりだと思う。また、氏の影響力の強さを考えれば、台湾の人たちを理解するときの参考になるのではないだろうか。
私のこの案内の中に武士道の部分は紙面の関係で省略されてしまったが読んでいただければ分かる部分である。それより感銘を受けた前半部分に焦点を当てた。
書 名:「武士道」解題
ノーブレス・オブリージュとは
著 者:李登輝
出版社:小学館、小学館文庫
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